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Science

美しき星の絶景を映し出す宇宙の「目」が、かくもスイス製である理由

衛星軌道上にある探査機「トレース・ガス・オービター」から送信される、息をのむほどに美しい火星の風景。火星探査計画「エクソマーズ」における高度な科学ミッションを遂行する、人類最高峰の宇宙の「目」はどのようにして開発されたのか。スイス・ベルン大学の研究開発現場に迫る。
SPATIAL × COMPUTING

先生、「空間」は何次元ですか!? ── 理論物理学者・野村泰紀に訊く素粒子〜宇宙スケールで捉える「空間」の正体

雑誌『WIRED』日本版VOL.53では総力を挙げて「空間」×「コンピューティング」の可能性を掘り下げているが、肝心の「空間」自体は、どう定義すればいいのだろう。生半可な掘り下げでは、生焼けになることは目に見えている。ここはぜひ、当代屈指の理論物理学者の叡智に与りたい。というわけで、米国・カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)物理学部棟の4階にある、野村泰紀のオフィスを訪れた。野村先生、「空間」とは一体、何なのでしょうか?
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人新世は存在しない? 新しい地質年代をめぐる「世紀の大論争」

わたしたちが生きているのは、人間が地球に多大な影響を与える新しい時代、「人新世」だと科学者もジャーナリストも芸術家もよく言う。ところが今春、この時代区分を一流の地質学者たちは否決した。その背景をレポートする。

CO2だけではない。削減が必要なもうひとつの“炭素”とは

二酸化炭素と違い、気候変動対策の議論で言及されることが少ない「ブラックカーボン」。山火事の煙に大量に含まれるこの炭素は人間の健康を脅かすだけでなく、北極を黒い微粒子で覆い、太陽光の反射率を下げて雪や氷の融解を促すことで、地球温暖化を加速させている。

AIを搭載した超小型衛星が、宇宙から山火事を見つけ出す

人工衛星にAIを搭載して画像解析とデータ圧縮を宇宙で実行させることで、従来より500倍も速く森林火災を検出できる技術をオーストラリアの科学者たちが開発した。山火事の早期発見だけでなく、他の自然災害の早期警戒システムとしても役立つことが期待されている。

合成された人工血小板が、わたしたちの命を救う日がやってくる

血液の凝固を促すことで傷などを治癒させる血小板。保存期間が短いことが課題だったが、米国の研究チームは長期間の保存が可能な人工合成の血小板代替物の開発に成功した。
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世界の数理モデル化はどこまで可能か?

選挙から経済、気候、コロナウイルスまで、世界のあらゆる事象はモデル化されてきた。いまや人工知能のエンジンとしても、あるいは空間コンピューティングや世界のデジタルツインのためにもますます重要となる統計的モデリングの可能性と限界を考える。

CRISPRで風味改良された“ゲノム編集サラダ”、今秋一般向け展開も

カラシナは栄養価は高いが、辛味と苦味が強い葉物野菜だ。そこで、ゲノム編集技術「CRISPR」を使い、栄養価はそのままに風味を抑え、食べやすくしたカラシナが開発された。このカラシナは、早ければ2024年秋頃から米国で一般消費者向けに流通する見通しだ。
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植物が自ら窒素を固定、夢の「自己肥料化作物」は実現するか

窒素は生命に不可欠であり、空気中の78%を占めるにもかかわらず、動物も植物も自らそのまま摂取することができない。生物学者は長年にわたり、窒素固定菌を介さずとも空気から直接窒素を摂取する作物を育てようとしている。

打ち上げに成功したボーイングの宇宙船「スターライナー」が、今後の宇宙開発にもたらすこと

ボーイングの有人宇宙船「Starliner(スターライナー)」による初の有人試験飛行の打ち上げが、6月5日午前(米国時間)に成功した。この新しい宇宙船には、国際宇宙ステーション(ISS)の運用終了後も見据えた輸送手段としての重要な役割が期待されている。

脳インプラント装着で「マルチタスキング」──ニューラリンク初の被験者に訊く

イーロン・マスクのニューラリンクが開発したブレイン・コンピューター・インターフェイス(BCI)。その被験者第1号となった30歳の男性に、考えるだけでコンピュータを動かす体験と、四肢にまひがありながら自立する実感について語ってもらった。

電気の力で味を増幅、「エレキソルト スプーン」が味覚の“常識”を変える

微弱な電流によって味を増幅する「エレキソルト スプーン」が5月20日に発売された。減塩食の塩分の量が控えめのままおいしく食べられるという、このスプーン。電気で増幅された味とはいかなるものか、さっそく体験してみた。

脳とコンピューターをつなぐ技術が中国でも進展、浮かび上がる懸念点

ブレイン・コンピューター・インターフェイス(BCI)に関する技術で、中国は米国に追いつきつつあるという。ただし欧米とは異なり、中国では健康な人の認知機能強化という、医療以外の目的での研究も進んでいるようだ。

鳥インフルエンザが米国でどれほど広まったのか、誰も知らない

今春、鳥インフルエンザが米国で拡がったが、専門家は感染状況がかなり過小に見積もられている可能性が高いと指摘する。米国では酪農家が牛を検査して報告するメリットがあまりない上に、酪農場では不法労働者が数多く働いていることが、状況把握を困難にしている。

緑化された屋上で雨水も回収、「ブルーグリーンルーフ」の可能性

オランダのアムステルダムでは、屋上で植物を育てるだけでなく、住人の生活用水を確保する場所として活用するための実験が進んでいる。“絞って使える”未来型スポンジシティの登場だ。

肥満症治療薬「ウゴービ」による体重の減少は4年間持続する:研究結果

肥満治療薬「ウゴービ」の注射を週に1回続けた場合、最大で4年間体重を減らす効果が続くことが、長期的な臨床試験によって示された。しかし、患者が薬の投与を中止した場合、効果がどれだけ続くのかはまだわかっていない。

陽子に光子をぶつけて内部構造を探索、その革新的実験が解き明かすもの

光を用いて重力を擬装するという長らく有望視されてきた実験によって、原子を構成する陽子内部のエネルギーや力や圧力の分布が初めて明かされつつある。

今夏に予測される「巨大ハリケーン」、その発生のメカニズム

2024年の夏は北大西洋上に11のハリケーンが発生し、そのうち5つが大型化するという予測を、研究者グループが発表している。夏の嵐が危険な巨大ハリケーンへと急変する背景には、止まらない海洋の温暖化やラニーニャ現象がある。

都市に樹木を植えれば猛暑による死者を減らすことができる:研究結果

木々がつくる日陰は、温暖化が進む都市部に大きな冷却効果をもたらしてくれる。最新の研究によると、ロサンゼルスでは樹木を増やすなどの対策によって、暑さに起因する救急搬送の数を現在の3分の2にまで減らせるかもしれないという。

ラボでつくられた培養チキン、世界初の店頭販売がスタート。ただし、動物細胞の比率は3%

ラボでつくられた培養肉の店頭販売が、世界で初めてシンガポールで始まった。この“培養チキン”には動物細胞が3%しか含まれていないが、果たして受け入れられるのか。

HIVワクチンの開発が大きく前進、抗体を産生する新たな手法が秘めた可能性

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)ワクチンに必要な抗体の産生に有効とみられる手法を、米国の研究チームが見つけ出した。これにより、ワクチンの開発が加速することが期待されている。

サウナの利用が、うつ症状を大幅に軽減する可能性:研究結果

高温で全身を温める温熱療法がうつ症状を大幅に軽減する可能性が、小規模な臨床試験に基づく予備的な研究結果で示された。つまり、サウナ療法がうつ病に効果がある可能性があるということだ。

「DNA合成」をめぐる新規制は、悪意ある作成を阻止できるか

米政府は4月末、DNA合成の安全性にまつわる新しい規制を発表した。技術が悪用されてしまう危険性は以前から指摘されてきたが、今回の規制はDNA合成業者に対し、問題のある遺伝子配列の注文の特定や顧客の正当性の評価を求めている。

初のブタ腎臓移植の患者が死亡、その功績が患者や研究者たちに残したもの

遺伝子改変したブタの腎臓の移植を生きている人間として初めて受けたリチャード・スレイマンが、移植手術から約2カ月で死亡した。家族はスレイマンが移植を待つほかの患者たちに楽観的な見方を提供したことに慰めを感じているという。

胚ゲノム配列を解析して生まれる赤ん坊を選ぶ──“遺伝子強化”は科学かSFか

10代でティール・フェローとなったノール・シディキは、人々が「健康な赤ん坊を産める」ようにと願い、妊娠スタートアップOrchidを創業した。新しい技術の存在を親に教えないのは「不誠実」だとする彼女に、その真意を訊いた。

地盤沈下するメキシコシティで、地下鉄システムが危機に直面している

メキシコの首都では、場所によって異なるスピードで地盤沈下が起きており、都市インフラの安定が損なわれる事態となっている。公共交通機関にとっても、これは悪い知らせだ。

老朽化するインフラは自然を取り込みながら改修する:米国運輸長官インタビュー

米国では、道路や橋などのインフラの劣化が深刻化しているが、気候変動がこれに拍車をかけている。修復のため、米政府は8億ドル超の助成金を出すと発表、グリーンインフラを取り入れたその展望について、ピート・ブティジェッジ米国運輸長官に訊いた。

月の砂からソーラーパネルをつくる:小国のスタートアップが目指すサステナブルな宇宙開発

ルクセンブルクのスタートアップ、Maana Electricの目標はふたつ。ひとつは月面生活のエネルギー源となる太陽光パネルを月の砂からつくること。もうひとつは、地球上の太陽光パネルの製造をサステナブルにすることだ。そのミッションをいかに実現させていくのか、同社のCOOに訊いた。

人間への脳インプラントに“問題”が発生、ニューラリンクの挑戦は険しい道のり

脳とコンピューターをつなぐインターフェイス(BCI)を開発しているイーロン・マスクのニューラリンク。脳インプラントの施術を受けた初の被験者の男性に、どうやら“問題”が発生したようだ。

地球外生命体の探索に暗雲、その惑星の気体は本当にバイオシグネチャーなのか?

地球以外の惑星で生命体を探知する方法としては、惑星の大気中の気体を分析する方法が知られている。だが金星で検出されたホスフィンやそのほかの事例をめぐる最近の議論から、この方法の妥当性に暗雲が立ち込めている。

創薬を加速させる新しいAI、DeepMindが発表した「AlphaFold 3」が秘めた可能性

タンパク質の立体構造を予測するAIの最新版「AlphaFold 3」をGoogle DeepMindが発表した。画像生成AIの手法を応用するなどして分子の相互作用の高精度な予測を実現しており、こうした進歩が創薬を加速させる可能性が期待されている。

相次ぐ新発見で「小脳」の秘密を解き明かす科学者たち

小脳は、運動制御のほかにも多彩な働きを担っている。新たな技術により、小脳が実は脳内の感覚・感情処理において、拠点となる役割を果たしていることがわかってきた。

ボーイングの宇宙船「スターライナー」、悲願の有人飛行が打ち上げへ

ボーイングが開発した有人宇宙船「Starliner(スターライナー)」による初の有人試験飛行の打ち上げが予定されている。これは事故などで厳しい状況にあったボーイングにとって、悲願の打ち上げとなる。

風力発電の修理技術者は、現場でどんな仕事をしているのか? ベテランが語る“高所作業”の現実

再生可能エネルギーの利用が加速するなか、風力発電所の数も世界的に増えている。その安定稼働に欠かせないのが、風力タービンのメンテナンスを担う修理技術者の存在だ。高所作業も伴う仕事は、いかなるものなのか? 13年の経験をもつベテランが語った。

都市の“スポンジ化”を提唱、世界的なランドスケープアーキテクトが語る気候変動への処方箋

都市を緑化して雨水を集め、気候変動による水不足に備える“スポンジシティ化”を提唱し、世界的に注目されている中国のランドスケープアーキテクトのユー・コンジエン(兪孔堅)。その手法の有用性と具体的な方策について、ユーに訊いた。
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砂漠を農地に変えるソーラーポンプの活躍が、地下水を急速に枯渇させている

乾燥地帯の農家は、農地へ水を引くにあたって低コストのソーラーポンプに注目している。ソーラーポンプを利用すれば化石燃料が不要となり、作物の生産量も増加するが、その一方で世界中の帯水層が枯渇しつつある。

タコの知性をひもとき、見えてきた研究領域の“空白”──『解明! 神秘なるオクトパスの世界』研究者インタビュー

地球について考えるアースマンスに、ディズニーとナショナル ジオグラフィックは『解明!神秘なるオクトパスの世界』の放送・配信をスタートした。本作に登場する海洋生物学者に、動物の知性をめぐる研究や食文化への影響、動物福祉とセンシエンスについて訊いた。

生成AIの進歩で加速、“不気味の谷”に立ち向かうソーシャルロボットの世界

高齢者向けにインタラクティブな“デジタルの友達”の役割を果たすソーシャルロボットが注目されるようになってきた。まだ市場は初期段階で課題も多いが、生成AIの進歩に伴って会話型ロボットの開発は加速しそうだ。
Inevitability

地球温暖化を加速させる「エアロゾルの減少」というパラドックス

人類が化石燃料の使用を削減しなければならないのは確かだ。だがそれによって、地球を冷却するエアロゾルの排出も減少し、皮肉にも温暖化が加速する恐れがある。それでも、大切なのは根本原因を見失わないことだ。

走行中の列車の屋根の上は走れるのか? 物理学に基づいて検証してみた結果

走行中の列車の屋根の上を走るシーンをハリウッド映画などで見たことがあるかもしれない。これは実際に可能なのだろうか? 物理学に基づいて検証してみた。
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リジェネラティブな農法で土壌を再生、台頭するカーボンファーマーたち

世界の農家はいま、土壌の健全性を向上させて収穫量を増やし、大気中の二酸化炭素を土壌に取り込むために、かつての非集約型の農法を復活させつつある。

大量の「電子廃棄物」がグローバル危機をもたらしている:国連レポート

国連の最新レポートによると、世界中で生み出される年間620億kgの電子廃棄物のうち、リサイクルされるのはわずか4分の1だという。同時に、電子機器が修理できることの重要性も指摘されている。

AIの「創発性」は幻影に過ぎない──大規模言語モデルの新たな測定で判明

最新の研究により、大規模言語モデル(LLM)の性能が突然飛躍することは驚きでも予測不能でもなく、実際には人工知能(AI)の性能を測る方法に関係していることが示された。

遺伝子改変されたブタの腎臓移植、今度は心臓ポンプを装着した患者で成功

遺伝子改変されたブタの腎臓を移植する新たな手術が成功し、ニュージャージー州に住む54歳の女性が2人目の生存者となった。心臓ポンプを装着した患者への初の移植成功事例となり、拒絶反応を防ぐためにブタの胸腺も移植されたことが特徴だ。

脳インプラント、次なる挑戦は「人工視覚」

目の不自由な人が大まかな視覚情報を得ることを可能にするデバイスを、複数の研究グループが開発している。まだ実験段階であり、時間もかかると見られているが、ある被験者は「次世代のために」参加していると語る。

脳インプラント手術を受ける患者の数は「膨大になる」:BCI外科医、未来を語る

誰もが脳をコンピューターに接続する時代が来たら、ハードウェアを手術でインストールしてくれる医師がもっと必要になるだろう。BCIの臨床試験手術を手がける医師に『WIRED』が話を訊いた。

ドバイで起きた洪水の原因が「人工降雨」ではないと言える理由

ドバイで記録的な大雨が発生して洪水が発生した。人工降雨の手法であるクラウド・シーディング(雲の種まき)が原因とも指摘されているが、“犯人”は別にいると言えるいくつかの理由がある。