学習する文化を取り入れた組織では、好奇心や知識の共有を促す環境が育まれ、ビジネスの成果につながります。学習する文化が根付いている組織は、仮に将来、社会で求められるスキルが大きく変化したとしても、従業員が新たなスキルを比較的習得しやすいので、競争優位性を保つことができます。また、従業員は成長の必要性を自分のこととして認識し、行動できるようになります。学習する文化を根付かせるための効果的な方法の 1 つは、従業員間での学習を促すプログラムを導入することです。従業員間での学習プログラムにおいては、実体験から得た知見を直接同僚から学ぶことができ、また、知識を伝える側の従業員も、教えることによって成長することができます。
Google で実施されているトレーニングの 80% が、「g2g」(Googler-to-Googler)と呼ばれる Google 社員同士のネットワークを通じて行われます。ボランティアによるこの教育ネットワークでは、6,000 人を超える Google 社員が自分の時間を割いて、同僚が学び、成長できるように支援しています。社内で「g2g’er」と呼ばれるこのボランティアでは、Google のあらゆる部門の社員が、コースの指導、1 対 1 のメンタリング、学習教材を構築するなど、さまざまな形態で参加しています。
g2g’er によって提供される一般的なクラスの多くは、交渉、リーダーシップなどの一般的なスキルのほか、セールス トレーニング、Python コーディングなどの特定職務に関連したスキルに焦点を当てています。また、多くの社員が新たなチャンスに結びつくスキルを身に付けられるようにサポートしています。たとえば、スマートフォンによるモバイル コンピューティングが爆発的に拡大した際には、元 Android チームの社員が開催した Android トレーニング ブートキャンプに数千人の社員が参加しました。
外部のベンダー(および社内にいるごく少数の専門トレーナー)が教えているクラスもありますが、その数は多くはなく、内容が高度に専門的であるか、経営幹部を対象したものであるかのいずれかです。
社員間で行う学習プログラムは「少ない労力で大きな成果を上げる」ことを目的としているのではありません。トレーニング予算を節約したり、参加を義務づけたりすれば、講師となる社員の反感を買い、指導はおざなりになり、受講者を混乱させるだけの結果に終わるでしょう。社員間で行う学習プログラムを導入する前に、見落としている点がないか考えてみてください。g2g プログラムが Google でこれほどの成功を収めたのは、社員が自発的に参加したためです。このような行動は、組織に根付いた学習する文化に支えられているのです。