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海外のホットライン

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INHOPEの活動

1. 「INHOPE」とは

International Association of Internet Hotlines - INHOPE」はインターネットにおけるホットラインの国際的な連合組織である。インターネットの発展に伴い、インターネットというメディアが小児性愛者によって児童性的虐待画像の出版・交換に使われるようになったことから、1995年に入ってドイツや英国においてインターネット上での児童性的虐待を防ぐ取組みが始まったことがINHOPE設立のきっかけとなった。

 

1996年6月、最初のインターネット子どもポルノホットラインがオランダで設立されるとノルウェー、ベルギー、英国もこれに続いた。その後、欧州各国でホットラインの必要性が認識され、この動きにより1999年11月23日、欧州委員会(EC)の「より安全なインターネット行動計画(Safer Internet Action Plan)」のもと、オランダの会社として正式にINHOPEが設立された。

設立当初は6カ国8ホットライン*1)から成る協会だったが、現在では欧州、アジア、北米、オーストラリアを含み世界中にその活動が広がっている。


*1) 8ホットライン:Internet Watch Foundation(イギリス)、Meldpunt(オランダ)、AFA(フランス)、ECO/FSM/jugendschuts.net(ドイツ)、Stopline(オーストリア)、ISPAI(アイルランド)

*2) INHOPE加盟ホットライン一覧
https://www.inhope.org/EN#hotlineReferral


 

2. 「INHOPE」のヴィジョン、ミッション

INHOPEのヴィジョンはオンライン上のCSAM(Child Sexual Abuse Material - 児童性的搾取画像等)をなくすことにあり、CSAM撲滅にむけ活動しているホットラインのネットワークをサポートすることをミッションとしている。 
各ホットラインはINHOPEのCode of Praciceを遵守している。

INHOPE加盟ホットラインの取組み

代表的な海外のホットラインの取組みは以下のとおりである。

 

1. 米国:サイバーチップライン(Cybertipline)

サイバーチップライン(Cybertipline)」は、1998年、インターネットネットの苦情・相談受付ホットラインとして設立された。運営母体は、児童の誘拐や性的虐待の防止、失踪児童の発見や誘拐・性的虐待を受けた児童・家族を手助けする「NCMEC:National Center for Missing and Exploited Children(全米失踪・被搾取子どもセンター)」である。NCMECは1984年に議会によって認可され設立された非営利団体であり、連邦政府からの補助金及び民間企業からの寄付によって運営されている。

サイバーチップラインでは、児童ポルノの製造、配給、所持を含む性的搾取、オンラインでの児童誘惑、児童買春、児童との性行為を目的とする旅行、家庭外での児童に対する性的虐待、児童に勝手に送付されるわいせつ文書や紛らわしいドメイン名、言葉、デジタル画像などの通報を、Webフォームまたは電話により24時間365日受け付けている。

受領した通報は、1)Cyber Tiplineのオペレータが通報内容を確認し優先順位をつける、2)MCMECの児童搾取部門でそれらの情報を分析(違法性の判断)し追加調査を行う、3)分析・追加調査が行われた情報(データベース)に、FBI(連邦捜査局)、ICE(移民税関捜査局)、USPIS(郵便捜査局)が直接アクセスしてその情報を確認する。必要に応じて、NCMECから地方警察や海外の当該国のホットライン、警察、ISP等に連絡する。

米国においては、合衆国法典18編2258A条により、児童ポルノに関する違反の事実を知った場合は、電子サービスプロバイダー(ESPs)はサイバーチップラインへ通報することが義務付けられている。

2. 英国:IWF(Internet Watch Foundation)

IWF(Internet Watch Foundation)」は、1996年、児童ポルノを含むインターネット上の児童性的虐待コンテンツ、英国の刑法に反するわいせつなコンテンツ、写真以外の児童性的虐待画像等に関する通報窓口として、英国インターネット業界により自主規制団体として設立された。IWFは、会費収入、EUからの助成金、その他により運営されている。

Webフォームで通報受理後、通報内容を分析し、違法であると判断される情報について発信元を追跡、その情報が英国内から発信されている場合は警察に通報し、警察への通報48時間後にISPに通報する。児童ポルノが海外から発信されている場合は当該国のホットラインや警察に通報する。

英国においては、児童性的虐待に関する通報があった場合、ISP等の情報仲介事業者は迅速に違法情報を削除、あるいは、その情報にアクセスできないようにする義務が生じるため、通報を受けたISPは削除依頼がなくても必ず削除する。

3. ドイツ:青少年保護ネット(jugendschutz.net)

ドイツには、「青少年保護ネット(jugendschutz.net)」、「マルチメディアサービスプロバイダー自主規制協会(FSM:Freiwilligen Selbstkontrolle Multimedia)」、「ドイツ・インターネットビジネス連盟(ECO:Verband der deutschen Internetwirtschaft)」の3つのホットラインがある。

そのうちの青少年保護ネットは、青少年保護上問題のあるメディアサービスを審査するホットライン機能をもつ機関として、1997年、全ドイツ連邦州により共同設立された。

インターネット上の児童を危険にさらすコンテンツや児童の成長に悪影響があるとされるコンテンツが対象であり、児童ポルノや未成年の不自然で性的に露骨な姿態、児童を危険にさらすポルノ、チャットルームでの性的暴力やハラスメント、極右主義、暴力、自傷行為、人種差別等の通報を受け付けている。

国内で発信された違法通報はISPに違法情報を削除するよう要請し、ISPが削除に応じなかった場合は青少年メディア保護委員会(KJM)に通報する。児童ポルノのような重大な違法情報の場合は、青少年保護ネットから直接、警察(BKA)に通報し、国外に蔵置された違法情報(児童ポルノ)はINHOPE経由で通報する。そのほか、チャットやSNS等を含みインターネット上における人種等を理由とした差別発言等(cyber-hate)の撲滅に取り組む国際的ネットワークである「INACH:International Network Against Cyber Hate」の創設メンバーとしても活動している。

4. フランス:コンタクト・ポイント(Point de Contact)

コンタクト・ポイント(Point de Contact)」は、1998年、インターネット上の違法情報に対応するためのホットラインとして開設された。運営母体は、1997年に設立されたフランスのISP業界団体、「AFA:Association des Fournisseurs d'Accès et de Services Internet」である。

コンタクト・ポイントにおける通報受理対象は、児童性的虐待画像、人種差別や憎悪の扇動、子どもがアクセス可能な不快な内容、戦争犯罪または非人道的な罪への賞賛、人々に対する罪、テロリズムや爆弾製造への扇動、自殺や暴力への扇動である。

AFAで受理した通報内容が法律に反する可能性があると判断された場合、その情報がフランス国内に蔵置されていればプロバイダと警察当局、海外に蔵置されていればINHOPEまたは国際刑事警察機構(ICPO:International Criminal Police Organization)に通報する。これは、2004年の「デジタル経済における信頼のための法律」により義務化されている。