無意識の偏見に意識を向ける

無意識の偏見に意識を向ける

じめに

偏見をなくすための第一歩は偏見に対する知識を得ることです。ある研究によれば、無意識の偏見を自覚すると、偏見から脱することができるいうことがわかっています。また、人が態度を変えるためには、考え方の背後にある無意識の偏見を理解することが必要なケースがあるそうです。

2013 年、Google は、社員と経営陣を対象に Unconscious Bias @ Workいった研修や、それにまつわるツールを開発し、偏見を排除するための全社的な教育活動を始めたのです。この取り組みによって、Google の社員は、無意識の偏見についての共通認識を確立し、共通の言語で議論を行うための土台を作りました。

偏見に関する科学的研究を学ぶ

無意識の偏見を科学的データに基づいて考察し、理解することで、この問題についての適切な議論(特に懐疑論者が相手の場合)組織内での問題解決に役立ちます。このテーマに関しては新たな研究結果が次々と発表されていますので、最新情報を常にチェックするようにしてください。この問題を理解するための基礎的な資料をご紹介します。

  1. Brooks, A. W., Huang, L., Kearney, S. W., & Murray, F. E. (2014). [Investors Prefer Entrepreneurial Ventures Pitched by Attractive Men.](http://www.hbs.edu/faculty/Publication Files/Brooks Huang Kearney Murray_59b551a9-8218-4b84-be15-eaff58009767.pdf)
  2. Brescoll, V. L., Dovidio, J. F., Graham, M. J., Handelsman, M. J. & Moss-Racusin C. A. (2012). Science Faculty’s Subtle Gender Biases Favor Male Students.
  3. Hebl, M. R., Foster, J. B., Mannix, L. M., & Dovidio, J. F. (2002). Formal and Interpersonal Discrimination: A Field Study of Bias Toward Homosexual Applicants.
  4. Jones, K. P., Peddie, C. I., Gilrane, V. L., King, E. B., & Gray, A. L. (2013). Not So Subtle: A Meta-Analytic Investigation of the Correlates of Subtle and Overt Discrimination.
  5. Martell, R. F., Lane, D. M., & Emrich, C., (1996). Male-Female Differences: a Computer Simulation.
  6. Murphy, M. C., Steele, C. M., & Gross, J. J. (2007). Signaling Threat: How Situational Cues Affect Women in Math, Science & Engineering Settings.
  7. Rudman, L. A., Ashmore, R. D., & Gary, M. L. (2001). “Unlearning” Automatic Biases: The Malleability of Implicit Prejudice and Stereotypes.
  8. Welle, B., & Heilman, M. E. (2007). Formal and Informal Discrimination against Women at Work: The Role of Gender Stereotypes.

経営陣を味方に付ける

Google の People Operations(人事部)は、無意識の偏見について科学的データに基づいて理解した上で、経営陣とのディスカッションを始めました。このディスカッションには、次の目的がありました。

  • 無意識の偏見に焦点を当てることが重要である理由と、この問題を解決することが社員や採用応募者、ユーザーの利益を最大化することにつながる理由を説明する。たとえば、無意識の偏見がもたらす影響を減らすことができれば、多種多様な社員を雇用する機会が増え、その結果、これまで以上に革新的なソリューションを創出できるようになる可能性があります
  • 無意識の偏見に関する科学的な理解を広め、全社員が十分な知識に基づいて話し合えるようにする。雇用から昇進予算配分至るまで、無意識の偏見がさまざまな場面に影響をもたらすことはすでに立証されています。そうした調査研究を紹介することも問題の解決に有効であり重要です。
  • 人々が抱く無意識の偏見を明らかにすることで、この問題が多方面に影響を及ぼすことを経営陣に理解してもらう。Implicit Association Test(IAT)いうテストを通して、人種や体重、障がい、年齢、性的指向、性別など、多様なトピックにおける無意識の偏見を簡単に科学的に測定できます。

無意識の偏見の科学的分析と、それがもたらす大きな影響、さらに偏見は至るところに存在するという事実を経営陣に理解してもらったところで、People Operations(人事部)は、無意識の偏見に関するディスカッションを社員に広める取り組みを開始しました。

Unconscious Bias @ Work の動画を観る

Google の People Operations(人事部)は経営陣からも後押しされ、無意識の偏見やその影響について学ぶ社員向けのワークショップ「Unconscious Bias @ Work」の準備に取り掛かりました。このワークショップの内容は、外部のリサーチや Google 社内の実例を軸に構成されています。全社員の半数以上が、60~90 分にわたるこのワークショップに参加し、Google 社内でも、最大規模の自発的学習プログラムとなっています。

Google のピープル アナリティクス チームのブライアン ウェル博士が司会を務める Unconscious Bias @ Work の動画ご覧ください。

Google のトライアル ワークショップについて学ぶ

Google 社内では、ワークショップをきっかけに無意識の偏見についての会話が活発になり、職場での偏見をなくすための取り組みについて情報交換が行われるようになりました。しかし People Operations(人事部)は、Unconscious Bias @ Work が期待どおりの成果を上げているか、判断できずにいました。ワークショップの効果を測定しなければ、何が有効で何が有効でないかを知るのは非常に困難です。

そこで People Operations(人事部)チームは、新入社員向けのオリエンテーションで実験を行うことにしました。実験では、オリエンテーション参加者を(1)ワークショップに参加、(2)ワークショップの動画で自習、(3)無意識の偏見に関するトレーニングを受けない(対照群)、という 3 つのグループにランダムに振り分けました。実験後、参加者の自己申告に基づいて分析を行ったところ、ワークショップに参加したグループは、無意識の偏見に対する意識と理解、この問題を克服しようという意欲が統計上有意なレベルに高まっていることがわかりました。また、動画で自習したグループにも、ワークショップに参加したグループと同様の結果がみられました。さらにワークショップの効果は、1 か月後の追跡調査の時点でも持続していました。この追跡調査では、ワークショップに参加したグループは対照群のグループと比べ、Google のカルチャーを公平で客観的であると見なし、ダイバーシティを尊重していると評価する傾向が大幅に高いことが判明しました。

ワークショップ トレーニングに参加した Google 社員と参加しなかった社員の比較

偏見を排除するためのワークショップを開く

トライアル ワークショップによってその効果を確認できたところで、People Operations(人事部)は、すべての Google 社員がワークショップに参加できるようにしました。Google 社員がファシリテーターとなる別の社員を教育する「トレーナー養成」方式で、ファシリテーターを増やすことにしたのです。この問題に特に熱心な Google 社員の力を借りて、ファシリテーターが各自で他の Google 社員を教育できる体制を整えました。ファシリテーターをボランティアで務めてくれる社員の貢献を会社が把握できるようにするとともに、彼らが責任を持ってその仕事を果たせるよう、上司たちにも教育への理解を求め、ワークショップが社員と企業文化に与える影響について説明しました。

ファシリテーター養成における重要な点の 1 つとして、無意識の偏見に関する科学的背景について理解してもらう必要がありました。Google には何事もデータに基づいて行う文化が浸透していることから、ワークショップ参加者の信頼を得るにはファシリテーターの調査結果についての徹底理解が不可欠でした。Google のプロダクト マネージャーで、Unconscious Bias @ Work の進行役を務めるジェイソンは、次のように述べています。

「ワークショップを成功に導くためには、参加者からの信頼を得ることが必要です。まず私たちファシリテーターが、無意識の偏見の科学的背景とデータを理解しなければ、信頼を得ることはできなかったでしょう。それに加えて、この「無意識の偏見」というテーマは大変魅力的でした。

無意識の偏見に関するワークショップを独自にアレンジして実施したいとお考えの方々のために、プレゼンテーション スライドとファシリテーター ガイドを以下に紹介します。ご自由にお使いください。

最後になりましたが、多くの企業では、職場における多様性の受け入れを推進し、無意識の偏見に立ち向かうために、並々ならぬ努力を行っています。自社独自のトレーニングを企画せずとも、Google が提供する Unconscious Bias @ Work の動画Microsoft が提供する自習型のオンライン トレーニングFacebook が提供する無意識の偏見に関するトレーニングご利用いただけます。喜ばしいことに、これらのコンテンツはすでに多くの組織で利用されています。今後さらに広く利用されることを願っています。

カスタマイズ

Google の Unconscious Bias @ Work プレゼンテーション スライド

独自のワークショップを実施される場合に、カスタマイズして利用できるプレゼンテーション スライドです。

Google の Unconscious Bias @ Work ファシリテーター ガイド

スピーカー ノート、作業手順、注釈が含まれた、ファシリテーター ガイドです。印刷してお使いください。

偏見を排除するための Google での取り組みについて学ぶ

Google では、職場の偏見を排除するためのプロジェクトを数年前から進めていますが、この取り組みは長い旅であり、まだその一歩を踏み出したにすぎません。以下の動画では、Google のピープル アナリティクス チームのディレクターを務めるブライアン・ ウェルが、偏見を排除するためのGoogle での取り組みについて説明しています。