会社のイノベーション力は、リスクを受け入れられるかどうかに左右されます。イノベーション プロセスにはリスクがつきものです。新しいアイデアのなかには失敗するものもあってしかりです。失敗を恐れるとイノベーションはそこで止まってしまう可能性があります。職場において、失敗によって実績評価や給与、さらには雇用自体に影響が及ぶことを懸念しない人はいないでしょう。
イノベーションを起こすには、従業員が安心して発言し、リスクを恐れずに新しいアイデアを試せる環境が必要なことは組織側も認識しているはずですが、意図的または偶発的に、リスクテイクを奨励するどころかその意欲をそいでいることが多々あります。心理的安全性の研究者であるエイミー エドモンドソン氏が組織での失敗に対する対応について複数の経営幹部にインタビューしたところ、非難すべき行為が原因で起こった失敗はほとんどない、すなわち本当の意味で誰かの責任といえる失敗は全体の 2〜5% くらいにすぎないだろうとの回答を得ました。にもかかわらず彼らは同時に、失敗の 70~90% は依然誰かが責任を取るべきと捉えられている、とも答えています。
したがって、組織において失敗をどれだけ許容できているかを把握することが重要になってきます。さらに、部門が違えばリスクの許容幅も異なる可能性があります。Google では、四半期ごとにリーダーが全社員の前で、設定した目標とその成果指標(OKR)に照らし合わせて業績評価を行います。どのチームも目標を 100 %達成していないことがほとんどですが、進捗状況や失敗の詳細を隠すことなく共有し、 設定した目標を達成できなかった理由、学んだこと、次に進むための計画をリーダーが説明するようにしています。このように失敗を手本とし、失敗から学んだことを共有して成功へ導く道筋を立てることができれば、失敗自体は問題ではないという強力なメッセージが全社員に伝わります。
Google 社員は、失敗から学ぶためにいくつかの手法を実践しています。プロジェクトが始まる前にチームで集まって、プロジェクトが失敗につながるあらゆる可能性について話し合うこともあります。「プレモーテム」と呼ばれるこの手法は、2007 年に ゲイリー クライン氏によって広められました。このようなディスカッションを通じてオープンに話す機会を持つことで、失敗はつきものであると認識し、実際の失敗に備え、学びを得ることができます。
Google では、プロジェクトの立ち上げ時やサービスに重大な障害が生じたときも同様に、チームが再び集まって事態の詳細について話し合います。この「ポストモーテム」は、うまくいったこと、いかなかったこと、そして改善のためにチームでできることについてオープンかつ率直に話し合うために行われます。全社員の前でプロジェクトのポストモーテムの分析結果を共有するチームもあります。失敗とは、組織全体が学ぶべきひとつのデータポイントなのです。
以下のツールは、チームでディスカッションするための一般的なフレームワークです。必要に応じてカスタマイズしてお使いください。