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「イエロー・ジャーナリズム」の版間の差分

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'''イエロー・ジャーナリズム'''({{Lang-en-short|Yellow Journalism}})とは、新聞の発行部数等を伸ばすために、事実報道よりも扇情的である事を売り物とする形態の[[ジャーナリズム]]のこと。


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これは、多彩な[[形容詞]]と[[誇張]]の使用や、迅速さを優先して事実検証不足のニュース速報あるいは全出来事の慎重な偽造によって作り出された物語などのような形式をとる場合がある。

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黄色新聞に扇情的に扱われた人間の興味話は、特に[[アメリカ合衆国]]で、[[19世紀]]を通じて発行部数と読者数を極度に増加させた。
黄色新聞に扇情的に扱われた人間の興味話は、特に[[アメリカ合衆国]]で、[[19世紀]]を通じて発行部数と読者数を極度に増加させた。


==主な特徴==
== 主な特徴 ==
歴史家のフランク・ルーサー・モットは[[1941年]]に以下の5つをイエロージャーナリズムの特徴として挙げている<ref>{{Cite book|last=Mott|first=Frank Luther|title=American Journalism|date=1941|pages=539|url=http://books.google.com/books?id=3lTybuXbGVsC&printsec=frontcover&dq=mott+%22american+journalism%22&hl=en#PPA539,M1}}</ref>。
[[歴史家]][[フランク・ルーサー・モット]]は[[1941年]]に以下の5つをイエロージャーナリズムの特徴として挙げている<ref>{{Cite book|last=Mott|first=Frank Luther|title=American Journalism|date=1941|pages=539|url=https://books.google.co.jp/books?id=3lTybuXbGVsC&printsec=frontcover&dq=mott+%22american+journalism%22&hl=en&redir_esc=y#PPA539,M1}}</ref>。
* 赤や黒の大きな活字で人を驚かせるような見出しをつける。大したニュースでもないことが多いため、全体として嘘臭い構成になる。
* 赤や黒の大きな活字で人を驚かせるような[[見出し]]をつける。大したニュースでもないことが多いため、全体として[[]]臭い構成になる。
* 絵や写真を多用するが、その多くはどうでもいいようなもので、盗用や捏造も見られる。
* 絵や写真を多用するが、その多くはどうでもいいようなもので、[[盗用]][[捏造]]も見られる。
* あらゆる種類の詐欺的行為が行なわれている。たとえば、インタビューやストーリーの捏造、誤解を招く見出し、エセ科学など。
* あらゆる種類の[[詐欺]]的行為が行なわれている。たとえば、インタビューやストーリーの捏造、誤解を招く見出し、[[疑似科学|エセ科学]]など。
* 日曜版には、カラーの漫画や中身の薄い記事が掲載された付録がつく。
* 日曜版には、カラーの漫画や中身の薄い記事が掲載された[[おまけ#付録|付録]]がつく。
* 弱い者の味方であるかのように振る舞う。
* [[社会的弱者|弱い者]]の味方であるかのように振る舞う。


==NYワールド紙 vs NYジャーナル紙==
== NYワールド紙 vs NYジャーナル紙 ==
扇情的な通俗記事や娯楽記事の掲載でピューリッツァーがニューヨーク・ワールド紙の部数を飛躍的に伸ばしたことを見て、ハーストも同種のニューヨーク・ジャーナル紙の発行を始めた。ジャーナル紙はワールド紙の半額で、よりセンセーショナルな記事を満載して部数を伸ばした。両紙による読者獲得のための熾烈な競争が始まり、[[1896年]]に、ハーストはワールド紙のスタッフをごっそり引き抜いた。ワールド紙日曜版の人気漫画イエロー・キッドの作者も引き抜き、臆面もなくジャーナル紙でイエロー・キッドを連載させた。ピューリッツァーも別の漫画家を雇い、イエロー・キッドの連載を続けて対抗した。このことから、両紙は「イエロー・キッド新聞」と揶揄され、ここからイエロー・ジャーナリズムという言葉が生まれた。ニューヨークでのこの販売競争はアメリカ各地の新聞社にも飛び火し、扇情的なイエロージャーナリズムはまたたく間に全米に広まった。
扇情的な通俗記事や[[エンターテインメント|娯楽]]記事の掲載でピューリッツァーがニューヨーク・ワールド紙の部数を飛躍的に伸ばしたことを見て、ハーストも同種のニューヨーク・ジャーナル紙の発行を始めた。ジャーナル紙はワールド紙の半額で、よりセンセーショナルな記事を満載して部数を伸ばした。両紙による読者獲得のための熾烈な[[競争戦略|競争]]が始まり、[[1896年]]に、ハーストはワールド紙のスタッフをごっそり引き抜いた。ワールド紙日曜版の人気漫画イエロー・キッドの作者も引き抜き、臆面もなくジャーナル紙でイエロー・キッドを連載させた。ピューリッツァーも別の漫画家を雇い、イエロー・キッドの連載を続けて対抗した。このことから、両紙は「イエロー・キッド新聞」と[[揶揄]]され、ここからイエロー・ジャーナリズムという言葉が生まれた。ニューヨークでのこの販売競争はアメリカ各地の新聞社にも飛び火し、扇情的なイエロージャーナリズムはまたたく間に全米に広まった。


==脚注==
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<references/>
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==関連項目==
== 関連項目 ==
* [[ハースト・コーポレーション]] ハースト系新聞の本社。
* [[ハースト・コーポレーション]] ハースト系新聞の本社。
* [[サンフランシスコ・エグザミナー]] ハースト系新聞。同誌の[[米西戦争]]や、それに続く[[米比戦争]]によるフィリピンの植民地化支持に反対したのが[[マーク・トウェイン]]や[[グロバー・クリーブランド|クリーブランド]]前大統領の[[アメリカ反帝国主義連盟]]である。
* [[サンフランシスコ・エグザミナー]] ハースト系新聞。同誌の[[米西戦争]]や、それに続く[[米比戦争]]によるフィリピンの植民地化支持に反対したのが[[マーク・トウェイン]]や[[グロバー・クリーブランド|クリーブランド]]前大統領の[[アメリカ反帝国主義連盟]]である。
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* [[スポーツ新聞]]
* [[スポーツ新聞]]
* [[写真週刊誌]]
* [[写真週刊誌]]
* [[サイゾー]]
* [[文春砲]]
* [[週刊新潮]]
* [[メディア・リテラシー]]
* [[メディア・リテラシー]]
* [[虚偽報道]]
* [[虚偽報道]]
* [[タブロイド]]
* [[タブロイド]]
* [[ワイドショー]]
* [[ワイドショー]]
* [[マスゴミ]]


==外部リンク==
== 外部リンク ==
* [http://ci.nii.ac.jp/els/110002954939.pdf?id=ART0003311562&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1360331688&cp= センセーショナリズムを考えるアメリカ・ジャーナリズム史の文脈から」大井眞二]
* 大井眞二, 「[https://doi.org/10.24460/mscom.43.0_45 センセーショナリズムを考える : アメリカ・ジャーナリズム史の文脈から(<特集>報道と倫理 : その今日的な意味合い)]」『マス・コミュニケーション研究』 43巻 1993年 p.45-62, 日本マス・コミュニケーション学会, {{doi|10.24460/mscom.43.0_45}}


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2024年6月30日 (日) 04:22時点における最新版

黄色新聞の記事

イエロー・ジャーナリズム: Yellow Journalism)とは、新聞の発行部数等を伸ばすために、事実報道よりも扇情的である事を売り物とする形態のジャーナリズムのこと。赤新聞に近い。

1890年代に、ジョーゼフ・ピューリツァー発行の『ニューヨーク・ワールド』紙とウィリアム・ランドルフ・ハーストの『ニューヨーク・ジャーナル・アメリカン』紙が、漫画『イエロー・キッド』を奪い合って載せた事に由来する。共に「黄色新聞(イエロー・ペーパー)」として知られた。

これは、多彩な形容詞誇張の使用や、迅速さを優先して事実検証不足のニュース速報あるいは全出来事の慎重な偽造によって作り出された物語などのような形式をとる場合がある。

黄色新聞に扇情的に扱われた人間の興味話は、特にアメリカ合衆国で、19世紀を通じて発行部数と読者数を極度に増加させた。

主な特徴[編集]

歴史家フランク・ルーサー・モット1941年に以下の5つをイエロージャーナリズムの特徴として挙げている[1]

  • 赤や黒の大きな活字で人を驚かせるような見出しをつける。大したニュースでもないことが多いため、全体として臭い構成になる。
  • 絵や写真を多用するが、その多くはどうでもいいようなもので、盗用捏造も見られる。
  • あらゆる種類の詐欺的行為が行なわれている。たとえば、インタビューやストーリーの捏造、誤解を招く見出し、エセ科学など。
  • 日曜版には、カラーの漫画や中身の薄い記事が掲載された付録がつく。
  • 弱い者の味方であるかのように振る舞う。

NYワールド紙 vs NYジャーナル紙[編集]

扇情的な通俗記事や娯楽記事の掲載でピューリッツァーがニューヨーク・ワールド紙の部数を飛躍的に伸ばしたことを見て、ハーストも同種のニューヨーク・ジャーナル紙の発行を始めた。ジャーナル紙はワールド紙の半額で、よりセンセーショナルな記事を満載して部数を伸ばした。両紙による読者獲得のための熾烈な競争が始まり、1896年に、ハーストはワールド紙のスタッフをごっそり引き抜いた。ワールド紙日曜版の人気漫画イエロー・キッドの作者も引き抜き、臆面もなくジャーナル紙でイエロー・キッドを連載させた。ピューリッツァーも別の漫画家を雇い、イエロー・キッドの連載を続けて対抗した。このことから、両紙は「イエロー・キッド新聞」と揶揄され、ここからイエロー・ジャーナリズムという言葉が生まれた。ニューヨークでのこの販売競争はアメリカ各地の新聞社にも飛び火し、扇情的なイエロージャーナリズムはまたたく間に全米に広まった。

脚注[編集]

  1. ^ Mott, Frank Luther (1941). American Journalism. pp. 539. https://books.google.co.jp/books?id=3lTybuXbGVsC&printsec=frontcover&dq=mott+%22american+journalism%22&hl=en&redir_esc=y#PPA539,M1 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]